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肥前国ミステリー「與止日女命」

與止日女命をめぐる古代浪漫
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淀姫研究④ 豊玉姫信仰の東遷

対馬国の豊玉姫信仰(水を司る神信仰)が倭・末廬国に上陸したところで、まだまだ「與止日女」の一部が見えたにすぎません。

末廬国河上大明神に祀られていたのは海の神・豊玉姫であり、佐賀の内陸に至るにはいくつかの過程が必要ということです。

そこで問題となるのが「邪馬台国」。北九州説・近畿説ありますが、ここでは吉野ヶ里を邪馬台国としておきます。仮に吉野ヶ里が邪馬台国ではないにしても、吉野ヶ里を北部九州における重要なクニとしておきます。
そうすると、大和町川上に祀られている與止日女は、末廬国と内陸(吉野ヶ里)を往来する者によって伝えられた可能性が濃厚になってきます。
大和町は末廬国から厳木をぬけて吉野ヶ里へ至る経路の途中にあります。



大和町與止日女神社の場所は、嘉瀬川(佐嘉川)の上流に当たり、松浦川の上流に祀られている末廬国河上大明神と似た地形です。このことから、佐賀平野の重要な河川である佐嘉川の氾濫を鎮め、水を支配するために、豊玉姫信仰が伝播したもの思われます。

大和朝廷による日本統一が始まったころ書かれた『肥前国風土記・佐嘉郡』に、
「郡の西に川があって、佐嘉川という。この川上に荒ぶる神がいて、往来する人の半分を生かし、半分を殺す。県主の祖、大荒田が土蜘蛛の大山田女、狭山田女に神意を問うたところ、下田村の土で人形・馬形をつくり、神を祭れば必ずやわらぐといい、その通りにするとやわらいだ。川上に石神があり、名を世田姫(よたひめ)という。」と書かれています。

風土記も「記紀」同様に、実在した出来事を比ゆ的に表現したものと解釈すると、土蜘蛛は天皇に恭順しなかった古代の土豪のことを指すといわれており、大山田女、狭山田女は、大和朝廷の権力が佐嘉に及ぶ以前にこの土地を支配していた者ということになります。そうすると、この記述は「県主の祖、大荒田(朝廷側)が、土豪の信仰する神を祀ることによって、この地方が朝廷の支配下に置かれた」ことを意味しているのではないでしょうか。

川上の石神とは大和町川上の與止日女命のことを指すわけですが、「ヨドヒメノミコト」の名はなく、石神の世田姫(よたひめとかかれています。
末廬国(魏志倭人伝で3世紀末)は風土記の成立以前に繁栄していたクニであり、民衆にはまだ文字の文化が発達していなかったことを考えると、世田姫(よたひめ)は当時の人々の音写と思われます。つまり、「世田姫」は当て字で、ヨタヒメという発音が先に存在していたということです。
世田姫=ヨタヒメとは、ヨタヒメの「ト」と「マ」が欠落したものであり、もともとはトヨタマヒメと言われていた神様が、人々に長い間呼ばれる間にヨタヒメに変化してしまったのではないでしょうか。

また、『肥前国風土記』の世田姫の項の続きに
「此の川上に石神あり、名を世田姫といふ。海の神 [鰐魚を謂ふ] 年常に、逆流(さかまくみず)を潜り上り、此の神の所に到るに、海の底の小魚多に相従へり。或は、人、其の魚を畏むものは殃(わざわい)なく、或は、人、捕り食へば死ぬることあり。凡て、此の魚等、二三日を経て、還りて海に入る。」とある。
海の神が毎年、石神「世田姫」の元へ海の魚を従えてやってくるという記述。これには「海の神=鰐」と明記してあり、豊玉姫の本来の姿はワニであることから、当時はまだ、與止日女が豊玉姫と認識されていたのかもしれません。
しかし、石神「世田姫」(豊玉姫)のもとに豊玉姫自身がやってくるということになってしまい、矛盾を感じます。また、昔からこの土地にはナマズは祭神の使いであるから食べないという風習があるようですが、ナマズは川の魚であって、海の魚を従えてやってきたのだから無関係のような気がします。ナマズは川の魚の中でも大きいので、海の魚も従えると思われていたのでしょうか。海の神ワニがなぜナマズと解釈されたのか?おそらく「ナマズ」は後世のこじつけかと。

ここでは『肥前国風土記』の記述は、佐嘉川の流れに逆らって有明海からやってくる鰐の話ではなく、海人族の神である豊玉姫の伝来を現した故事であり、「海の神豊玉姫を祀る元となった末廬国の使者が、川上に祀られる世田姫(豊玉姫)のもとに、たくさんの部下を引き連れて険しい山々を越えて(逆流を潜りくぐりて)毎年やってくる。その人々を手厚くもてなせば災いは起こらない、人々は2~3日して海(末廬国)へ帰っていく」と解釈しておきます。

かくして豊玉姫信仰は、対馬国に始まり、壱岐、末廬国、そして佐嘉へと広がっていきました・・・!


つづく。

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神野奏太
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地理学出身、歴史学・民俗学・郷土史研究中。

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